最後の10手
藤井二冠の☖3七角(84手目)に、豊島竜王が☗5八王と寄った局面。藤井二冠が秒読みに追われ、王手=追う手で、勝勢であった将棋を敗勢にしてしまった局面である。
互いに1分将棋。難しい局面であるが、藤井二冠から豊島竜王の王に迫る順がない、と誰もが思った瞬間であった。
秒読みの中、1分ぎりぎりを使って59秒を表す『きゅう』が読まれたとき藤井二冠が『☖8六歩』と打った。
☖8六歩(86手目)
瞬間、解説者が黙った。しばらくして、この手が詰めろであることが分かる。解説者のみならず、大盤解説者、控室でも同じ反応だったようだ。1分将棋の中、こんな詰めろを見つけるなんて、と誰もが驚いた。が、その驚きは始まったばかりであった。
まずその詰めろ、☖4九角、☗6八王、☖5九角成、☗7九王、☖6八金、☗同金、☖同馬、☗同王、☖5八金、☗7九王、☖7八歩、☗同王、☖8七歩成、☗7九王、☖8八とまで、ぴったり詰む。
それに気が付いた豊島竜王、歩を取らざるを得なかった。攻めに回れない。
☗同歩(87手目)、
☖8七歩(88手目)、先ほどと同じようにして、さらに簡単になった詰めろ
秒読みに追われた豊島竜王、☗8七金(89手目)と歩を払う。
これが痛恨の一手、再逆転を許した瞬間であった。
もし、ここで、非常に難しい選択なのだが、6八王と寄っていたら、藤井二冠の攻めを首の皮一枚でしのいでいた。しかし、豊島竜王は・・・
藤井二冠、☖7八角(90手目)としなるような手つきで打ち据える。
豊島竜王、その瞬間、事の重大さを悟ったようだった。必死に詰めろをほどこうと、☗6六歩(91手目)と王の逃げ道を作るが、この時点で、誰もが、最後まで読める状態になっていて、あとは、どこで投了するかに興味は移っていた。本人もそれは理解していた。
☖5九金(92手)、☗6八王(93手)、☖8七角成(94手)
ここで豊島竜王が投了した。
その後すぐに、公開対局のため、別会場に移動し挨拶。そこで、感想と手の解説、再び戻って、大会場での挨拶。二人とも、早く感想戦をしたくてしょうがないという様子を見せていた。そして、感想戦、いつもより長い時間をかけて行われた。
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