藤井聡太七段vs久保利明九段戦を振り返り (メインより転載・編集) 完成?

 昨日の『竜王戦 藤井聡太七段vs久保利明九段 戦』を見て(棋譜速報して)いたこちら非常に疲れた。その疲れが残っているのに、朝5時半には起きてしまった。寝れないので、その棋譜を公式サイトで最初からチェックし、ブログの棋譜を訂正する作業をすることにした。ブログの途中の書き込みをきっちりしたものにしようと思ったが、なんせ、184手と言う長い将棋、棋譜チェックでえらく時間がかかってしまったので、書き込みはそのままにして棋譜の訂正のみにした。ということで、その戦いを振り返ってみました
 それにしてもものすごい将棋だった。
 出だしは、初手から、久保九段がこまめに時間をかけながらゆっくりと進む。13手目久保九段が、☗7五歩という新手?を出して、藤井七段も同じように小考を交えて、ほぼ同じような消費時間で淡々と進む。途中何度も、両者棋譜(と時間)を確認しながら、慎重な出だしである。そのため進行はゆっくりで、26手目で昼食休憩に入った。最近の将棋としてはかなりスローな展開。
 昼食休憩明け後は、1手1手に少し長い考慮時間を取るようになり、さらにゆっくとした展開。そして、藤井七段が長考に入る。記録係が眠たそうなかをしながら正面に座っている。63分の長考の末指した☖5五歩の後、数手小考しながら慎重に進めるが、その後の大立ち回りの飛車交換はバタバタと進み、ぱったっと手が止まった。やはり両者慎重である。この辺りが第一の山場であった。その後、両者龍をつくって自陣に引いて対峙する形になるが、形勢は、この辺りで、どうやら藤井七段が少しリードし始めたらしい。
 解説が当たり始め、豊川七段が後手藤井七段優勢と言うと、振り飛車の大家中田八段が「これで後手がいいなら、振り飛車が指せなくなる」と感覚の違いを示す。それほど微妙な形勢で、大局観と感覚の勝負になっているようだ。
 藤井七段の☖7四歩に、久保九段が長考に入り、解説では、先手が苦しいとの結論に達し、中田八段が先手の良くなる手を探しはじめ、それに豊川七段が答えるという解説になり始めた。難しいものの後手指しやすいとの結論。実際も、微差で後手指しやすい局面であったようだ。そして、久保九段長考のまま夕食休憩に入る。
 夕食休憩後、久保九段がなかなか指さない。かなり苦しいのかなと言う中田八段の言葉に表されるように、周囲(abema・現地棋士室)は後手優勢の結論を出していて、終盤戦の突入と見ていたが、実際は、この局面でも、まだ、この将棋の1/3にも達していなかった。長い長い、夜戦に入る。
 久保九段の長考後、何とかして、龍の筋が逆になる形に持ち込み体制を整え、にらみ合いが続く形を維持するが、この一連の手順で、久保陣営はほとんど前と変わらない駒の働きに対し、藤井陣は金が前に進み、目標にされそうな桂馬が戦線に参加するようになり、明らかに、後手が良くなっている。そして、藤井七段が☖4五歩と開戦。同歩に7六歩と龍の効きをなくし攻める体制をつくる。それに対し久保九段、何とかしのごうと6六銀と出る。一連の手は解説通り。豊川七段がここが勝負所という言葉に表されるように、お互いの手を抑えるねじり合いの勝負から、藤井七段の攻め、久保九段の守りの勝負になってきた。藤井七段の抑え込みに、久保九段が☗7七銀引で竜の効き通し、我慢してしのぐ。藤井七段☖4五銀と出て歩を手にして攻勢に出る。久保九段、☖5七歩成が見えているだけに☗4六歩と5筋の歩を払いに出た。abemaコメント欄では、ソフトが後手優勢、+500、かなり差が出てきたと騒いでいる。
 藤井七段が指した次の手に、周囲が騒然とする。☖4七歩。abemaでは、解説者二人がえっと言う顔をし、解説を試みる。コメント欄では、+500が-50になったとか、逆転した、先手良しになったとか、続々と書き込まれる。
 実際は、まだ互角。正確に指せば何とか藤井七段が優位を保てそうだったようだ。
 久保九段が5七不成を防ぐ☗5九角と引く。ここで、藤井七段が☖5六銀と引いていればまだ互角だったのだが、☖5七歩成を指して、怪しくなった。この後、☗同角、☖5四龍、☗3九角と進む。じりじりと久保九段が盛り返してきたが、ソフトがある手を推奨した。その手が☖8五桂。コメント欄では、8五桂、8五桂の合唱が始まった。解説陣は、誰もこの手が見えていなかった。
 ここで、藤井七段が、このソフトが推奨する8五桂を指す。abemaコメント欄では、さすが天才、やっぱり天才などの書き込みが連発される。
 さらにソフト推奨の☖5六歩打を指して、再び盛り返す藤井七段。ソフトによって評価はバラバラだが、藤井聡太七段が指し易くなったようだ。がその次に指した☖4五龍で一変する。ソフトは3五歩を推奨していた。☖4五龍はどうやら緩手で(悪手ではないと思うがコメント欄では悪手の判断)、一気に形勢が逆転した。その後、一気に決められなくなり苦しくなった藤井七段。ここを機に一気に決めるかと思われたが、決められない。
 振り飛車の大家中田八段も先手苦しいか?と漏らす。久保九段優勢が明確になってきたと思われた。この辺りから、北村女流が、タブレットで棋士室情報を伝えはじめ、解説陣も、それを解説に加える。かなり難解な局面が続く。
 その後、決め手を与えない久保九段の差し回し。ソフトが、推奨する手☖3五歩から☖5五角の手を、藤井七段が見つけられずに、攻めが空回り。そのすきをみて、久保九段がうまく自陣の角を世に出せる体制で、王の逃げ道を作り攻めを切らしに入る。藤井七段、先手玉を詰ましにかかるが、久保九段が、攻め駒をとらずに、☗3九王と逃げ道に逃げ込む。解説陣、うわあああ~と同時に声を上げる。書き込みも、驚きの声が書き込まれる。攻める藤井、逃げる久保の姿勢が続いく。随分前からどちらが良いのか判断がつかない状態で、解説も困っている状態。徐々に、藤井七段の攻めが切れているとの指摘が上がる。最後に詰まないことが分かり、ここで、藤井七段、あきらめて、自陣に手を戻す。
両者ともに1分将棋での攻防で、互いに攻めと守りが変わる。
 今度は、久保九段が藤井七段の玉を詰ましにかかる。形勢逆転かと思われた。
 どちらが優勢なのか、勝っているの完全にかわからなくなっていて、見守るしかない、手が指されるたびに、残っているのか、詰んでいるのかを解説陣や関西棋士室の検討もわからない状態。
 久保九段の逆襲☗6三龍の王手に、誰もが金合いと思っていた所を、藤井七段が、香を一つ進めて合駒にして受けたとき、これで久保九段雄勝ちと解説陣、棋士室、皆が思った。だが、これが違っていて、逆であった。これが最善の受けで、金合いは数十手かかるが詰んでいた(局後の解説)。さらにその後も、ぎりぎりの攻防が続く。解説陣、棋士室はだんまり。解説ができない状態。
 そして、最後の最後に、久保九段の攻めで、かろうじて、藤井玉が首の皮一枚残して逃げ切れることが分かる。これが見えていた香合いではないかと周囲はその天才ぶりに驚愕する。結局、藤井玉は逃げ切り、久保九段が詰ろをかけて、一手空ける。
 そこで、184手目、藤井聡太七段が5八桂成と王手をかけた。これを見て、久保利明九段が投了した。23時(23:23)を過ぎていた。
 感想戦で、5三香の後、5手目の久保九段の☗3三金打で、先に☗6ニ龍と入っていれば詰みがあったことが判明、この☗3三金が敗着であることが分かった。1分将棋での逆転であった。
 感想戦が終った時は次の日になっていたそうで、当然でしょうね。
壮絶な戦いで、棋譜を並べるだけでもそのすごさが伝わってくると思われる戦いだった。
 これで、藤井聡太七段、竜王戦決勝トーナメントで勝ち上がり、準決勝進出をかけて、豊島将之名人と対戦する。

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